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2011.8.29〜31(月〜水) 迫りくる恐怖
阿蘇の山中で車を止めて睡眠中に、奇妙な音で目を覚ました。
過去に聞いたことがない類の音。何をどうしたら、こんな音がするんだろう?
そもそも、いったい何者が来襲したのだろうか?
もしかして、僕の車の下に誰か潜り込んでいるのではなかろうか?
とにかく朝を待ち、明日車を移動させる前には、車の下に何もないことを確認する必要があるだろう。
ひどく酔っ払ったおっさんが、車の下に潜り込んでくるかもしれない。
僕は普段、車を出発させる際に車の下までは確認しないけれど、よく考えてみれば、そんな可能性だってゼロではない。
ある時は、車の周りを何週も歩き回る足跡が聞こえてきた。
おそらくボケているのだろうと思うが、徘徊中のおばあちゃんだった。
おばあちゃんは車に触れるくらいの位置を歩いていたので、誰もいるはずない、と思って車を動かせば、わずか50センチの距離だって、死なせてしまう危険性がある。
ともあれ、原因不明の音は、すぐに収まった。
やがて、その音が本当に自分が耳にしたものだったのか、或いは夢の中の何かだったのかが分からなくなり、また眠りについた。
しかし明け方、また同じ音が聞こえてきた。
やっぱり、夢じゃなかったんだ!
となると、音の正体を確認しておかなければ、今後に疑心暗鬼な思いを残してしまう。
「山の中で何泊も寝泊りして、怖くないですか?」
とよく聞かれるが、日本で、車の中で寝泊りする場合、一番怖いのは、はっきり言って人間である。
しかし今回の場合、人の気配は感じられない。足音や車に寄りかかるような圧力は一切感知できなかった。
そこで、そっとカーテンをあけ外を眺めてみたら、一匹の猫がいた。
いったい何をしていたのだろう?
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2011.8.26〜28(金〜日) 期限

重症の無気力症候群に取り付かれてしまい、ここのところ、仕事が先へ進まない。午前中はまだしも、午後からは体がだるくてどうにもならない。
もしかしたら、自分で無気力と思っている症状は、単に心の問題ではなくて、体調不良という体の問題が重なった結果かもしれないが、大抵は写真の提出期限に追い立てられた後に、無気力の症状が出る。
プロの仕事につきまとう期限というやつは、非常にやっかいな存在だ。
撮影が明らかに難しいシーンの場合なら、別にそれが期限までに撮れなくても恥ずかしいことではないし開き直ることができるが、一見簡単に撮影できそうで、実際にやってみたら難しかった場合はとにかく焦る。
例えば、蚊が吸血をするシーンを撮影したいのに、「この種類の蚊を撮影してください」、と指定されたその蚊が、どうしても血を吸ってくれない時・・・
まずは、なぜその蚊が血を吸わないのかを調べ、原因を明確にし対策を考えなければカメラを持つ段階にさえ至らないのだから焦る。
一方で、期限がなければ、撮れないものもたくさんある。
期限というプレシャーは、しばしば火事場の馬鹿力的な力を引き出してくれる。
そうして自分の予測以上のことができた時は、何よりも充実を感じる時であり、苦しみと喜びは紙一重だと言える。
心の底からの充実には必ず苦しみが付きまとう。僕にとって仕事をすることとは、それを体で覚えることだと言える。
昔、テレビのコマーシャルで、ジャイアンツの長嶋さんが登場して、グランドでゴロをさばきながら
「プレッシャーは確かにありますよ。緊張しちゃダメですね。プレッシャーを楽しめれば、その人は強いですよ。」
と語るものがあったが、そんな心境になりたいものだと思う。自分が苦しい時に、
「ああ、この先に充実が待っている。今最高にいい流れになっている。」
とニヤリとできるような。
ともあれ、能率が上がる時間帯が非常に短くなっているから、調子さえ良ければ1日程度で終わる雑務に、もう一週間ほども要している。
ただ、まだツキがあるなと思うのは、ここのところは天候が不順で、撮影には不適な条件だったこと。
昨日〜今朝あたりは、ようやく天気が回復してきたようだ。
明日からは、数日、水辺をウロウロする予定だ。
無心になって自然を満喫したいので、日記の更新はおろそかになる可能性もある。
(お知らせ)
写真展の案内・・・野村芳宏・西本晋也・武田晋一による3人展
● 場所 北九州市小倉南区平尾台 平尾台自然観察センター
● 期間 7月2日(土)〜8月31日(水) 9:00〜17:00
● 休み 毎週月曜日(ただし夏休み期間中は無休)
● 入場 無料
● 展示数 1人10点 合計30点 B4
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2011.8.24〜25(水〜木) アンバサダー5000C


ちょっと訳あって、古い釣具を引っ張りだしてみた。
竿は、大学時代に買ったもの。当時から大変に人気があるシリーズだったが、今ではオークションなどで高価な値がつく。
ブラックバスや雷魚のような魚を、藻ごと強引に釣り上げるような釣り方に使用するための竿だから非常に丈夫だが、定価がどうにもならないほど高額ではなかったのは、この竿がグラス製だからだろう。もしもこれがカーボン製だったなら、大学生が買えるような値段ではなかったはずだ。
リールは、武田家に出入りしておられる大工さんから、
「これを晋ちゃんやろう。」
と譲ってもらったもので、スウェーデンの有名なABU社製のアンバサダー5000C。
僕が中学生の時には、すでに後継機にモデルチェンジされていて5000Cは売られてなかったので30年以上前の製品になるが、ゾクッとするくらいに作りが良くて、糸を巻くためにハンドルを回すごとに、指先から脳天まで快感が突き抜ける感じがする。
今、大きな釣具屋に出かけ、最新のリールを片っ端から触ってみても、当時のアンバサダーの手触りに敵うものはない。
カメラで言うなら、ニコンがそれに近い存在だ。
メカとしての完成度が高く、写真を撮るということに関して合理的か?と言われればそうではないけれども、遊び心をくすぐる何かがある。
そのニコンの新製品が8月と9月に発表されるという噂があり、楽しみにしていたのだが、8月の発表はコンパクトカメラであり、僕が待ち望んでいたものではなく、9月の発表を待つことになった。
いったい幾らするんやろう?
いやいや、どんな製品が出るんだろう?
(お知らせ)
写真展の案内・・・野村芳宏・西本晋也・武田晋一による3人展
● 場所 北九州市小倉南区平尾台 平尾台自然観察センター
● 期間 7月2日(土)〜8月31日(水) 9:00〜17:00
● 休み 毎週月曜日(ただし夏休み期間中は無休)
● 入場 無料
● 展示数 1人10点 合計30点 B4
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2011.8.21〜23(日〜火) 個性とは

もう25年以上前のこと。僕が写真を始めた当初から好きなのが、亀田龍吉さんの写真だ。
柔らかい光で見やすく撮影された写真は、穏やかで大変に分かりやすい。
写真家はつい特殊な洒落た光を用いて癖のある写真を撮り、俺は俺は!と自己主張をしたくなるものだが、亀田さんの写真は、俺はではなくて、ひたすらに被写体について、この鳥は・・・、この花は・・・と語りかけてくる。
写真の撮り方に関して、僕は亀田さんの写真に大変に強い影響を受けた。
個性と言えば、俺は俺は!と自分について主張をすることであるかのように思い込んでしまいがちだが、亀田さんの写真を見ると、自己主張しないのもまた個性であり、自分についての主張であることに気付かされる。
実は僕は植物の同定が苦手で、どれを見ても同じに見えてしまいがちだし、それについては半分諦めている面があって図鑑を買おうかという気持ちになかなかなれないのだが、この本があれば僕にも分かる、と一目で気に入り、真っ先に買いたくなった。
表紙にあるように、白バックの写真を多用した図鑑であり、同じタイプの図鑑は他にもあるが、僕はこの図鑑に断然にひかれる。白バックのような写真は誰が撮影しても大差なしのはずなのに、やっぱり全然違うのだ。
写真の技術だけでなく、標本の選び方、標本の置き方・・・・、とにかく隅から隅まで心がこもっていて、その過程を思い浮かべてみると、あまりにも丁寧で気が遠くなりそうだ。
(お知らせ)
写真展の案内・・・野村芳宏・西本晋也・武田晋一による3人展
● 場所 北九州市小倉南区平尾台 平尾台自然観察センター
● 期間 7月2日(土)〜8月31日(水) 9:00〜17:00
● 休み 毎週月曜日(ただし夏休み期間中は無休)
● 入場 無料
● 展示数 1人10点 合計30点 B4
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2011.8.20(土) 決意を固める瞬間

吸血する蚊の写真を撮るために、蚊の飼育容器の中に腕を突っ込む。
カメラは三脚に固定し、あらかじめある地点に向けてピントを合わせておき、そこに血を吸われている腕を持ってきて、残りの手でシャッターを押すという自分撮り。
普段は煩わしい蚊の吸血を、この時ばかりは嬉しく思う。
血を吸い続ける蚊をニヤニヤ見つめ、やがて、よし、まずはちゃんとした写真が撮れた!と満たされる。
だが撮影した画像を拡大してみると、蚊の口と足とが重なっていて、肝心な口の部分がよく見えない。
自分撮りなので、なかなか思うようなアングルにならないのである。
やり直しをしているうちに、ついに腕がボコボコになってしまい、撮影できる場所が少なくなってきた。さらに、蚊が血を吸いたがる時間帯が過ぎ去り、誰も寄りつかなくなった。
こうなると、蚊が血を吸うことが、実に劇的で、スゴイ自然現象であるような気持ちにさえなる。
とにかく、蚊が血を吸いたがる時間帯が再び訪れるのを待つしかない。
やはり、自分撮りには限界がある。
今日は、子どもにお願いをして、蚊に献血をしてもらうことになった。
漫画を買ってあげるから、と言ったら、2冊買ってもらえるのならやりたいと言う。漫画2冊なら、あまりお金を持たない僕にだって、お安いものだ。
容器に腕を突っ込んでしばらくすると、一匹の蚊が舞い降りてきた。
「来た!」
とスタジオが興奮の坩堝と化する。
蚊は、他の動物から吸血した後で人の血を吸うと病気を媒介することがあるので、こうした撮影に使用する場合、卵の段階から飼育をし、純粋培養しておく。
面白いな、と思う。
自分が何をしたいのかが、かたまってくる感じがする。
ファンタジーの世界は、それはそれで素晴らしい世界だと思うが、僕は、ありのままの自然を面白いなと思う。
おそらく、僕の性格なのだと思う。ばっちり化粧が決まったおしゃれな美人よりも、素肌の素朴な女性が好きだ。
しかし、現実の自然を見せて成功した自然写真家は極めて少ない。
広く社会から受け入れられている写真家は、多少なりとも、ファンタジックな要素を持っていて、その部分が成功と強く結び付いているように思う。
だから時々、多少ファンタジックな何かを盛り込む必要があるのかななどと考えることもあるが、やっぱり自分らしく行こうじゃないか!と決意をかためる瞬間だ。
(お知らせ)
写真展の案内・・・野村芳宏・西本晋也・武田晋一による3人展
● 場所 北九州市小倉南区平尾台 平尾台自然観察センター
● 期間 7月2日(土)〜8月31日(水) 9:00〜17:00
● 休み 毎週月曜日(ただし夏休み期間中は無休)
● 入場 無料
● 展示数 1人10点 合計30点 B4
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2011.8.18〜19(木〜金) 悔しい瞬間
絵本を紹介する「絵本ミュージアム」というイベントがある。昨年からは、一社の出版社に特化した展示を行っており、今年は偕成社の絵本がテーマとして取り上げられている。
偕成社と言えば、僕がこの春、『水と地球の研究ノート』というシリーズを出版した社であり、武田さんも行ってみませんかと編集部の人から案内してもらい、昨日出かけてみた。
絵本のイベントということで閑散としたイメージを持って行ってみたら、まるでバーゲンセールのように多くの子どもたちで賑わっていて、いい意味で度肝を抜かれ、心地よかった。
一方で悔しいなと感じるのは、自然物、特にノンフィクションの本が少ないこと。
絵本なので仕方がないかもしれないが、それを抜きにしても、子どもの本の世界では、自然物は圧倒的に少数派であって、大半はお話だ。
お話は素晴らしいものだと思うが、僕はノンフィクションとのバランスが取れていることが大切ではないかと思う。
例えば、宮沢賢治の「やまなし」を読もうとしても、渓流やサワガニやカワセミを知らなければ、本当の意味で「やまなし」を味わうことはできないだろう。
また、自然を大切にしたいという心を持っていても、実際の自然について知らなければ、どうしていいかが分からないし、大切にしたいと思うその人の心を発揮することはできないだろう。場合によっては、自然を大切にしたいと思う誰かの思いが、正しい知識を持たないばかりに、逆に自然を乱してしまうようなケースだって決して珍しいことではない。
誰かが絵本ばかりを取り上げて自然物を取り上げてくれない、と批判したいわけではない。
絵本がそれだけの地位を確立したのは、熱心な人たちの活動の結果であり、自然物の本も、ただ作るだけでなく、認知してもらう努力が必要。
自分が何をしなければならないかを、改めて思った。
それは自分一人ではできないことであり、誰か同じようなことを感じている人と上手に力を合わせることが必要だと思うが、そんな時にこそ、まず自分が名乗り出て、自分の意見を明確にして、自分がやろうとすることが肝心だと思う。
(お知らせ)
写真展の案内・・・野村芳宏・西本晋也・武田晋一による3人展
● 場所 北九州市小倉南区平尾台 平尾台自然観察センター
● 期間 7月2日(土)〜8月31日(水) 9:00〜17:00
● 休み 毎週月曜日(ただし夏休み期間中は無休)
● 入場 無料
● 展示数 1人10点 合計30点 B4
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2011.8.17(水) 講演を引き受ける訳-2
ホームページやブログを見て、この人の世界好きだな、と感じる誰かの本を買ってみたら、がっかりさせられることが多々ある。面白いかどうか、という視点に立てば、作家の魅力があふれ出るのは、WEBや写真展だろうと思う。
一方で、本は権威である。
権威であるからうかつなことは書けないし、うかつな写真は載せられないし、どうしても内容を一般化せざるを得ないが、その時に面白さも抜けだしてしまう。
例えるなら、WEBが本音で会話ができる小さな座談会だとするなら、本はかしこまった場での公式な会話のようなものだと言える。
僕はそれを分かっているつもりではあるが、もうちょっと本を自由に作れたらとか、もっと自由に撮影できたらとか、なんでこうなっちゃうのかな?とか、確かにこの写真はちょっと分かりにくいかもしれないけどれど面白いやん、などと堪え切れなくなりそうな時もあり、自分がどうしたらいいのか分からなくなるのも事実。
そこで、講演という形で人々の前に立つ。そして直接人に語りかけ、人がどんな反応をするのかこの目で確かめる。
人前に立つことが大嫌いな僕が、講演を引き受ける大きな理由の1つだ。
すると、自分がおもしろいなと感じる部分を、やはり聴衆が面白がってくれる。
そうした経験を蓄積し、それらを、次の本作りに生かしたい。面白い本を作りたいと思う。
さて、昨日は、ある社の編集者がお越しになった。
僕は今、こんなことをしていますよ、と話をしてみると、その話の最中に自分自身について気付かされることや、自分の意見が整理されてくることが多々ある。
いつもそうなのだが、目下の仕事の話はほんのちょこっとだけで、大半の時間は、本についてとか、出版についてとか、生き物についてなどという話になる。
(お知らせ)
写真展の案内・・・野村芳宏・西本晋也・武田晋一による3人展
● 場所 北九州市小倉南区平尾台 平尾台自然観察センター
● 期間 7月2日(土)〜8月31日(水) 9:00〜17:00
● 休み 毎週月曜日(ただし夏休み期間中は無休)
● 入場 無料
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2011.8.15(月) 深夜のテレビ番組

進行中の蚊の撮影は、結果が出てないわけではないが、100点満点で言うなら70点くらいの写真を量産しており、どうも面白くない。
蚊のような人に好まれない生き物の撮影の場合、元々人から受け入れてもらうことが難しいのだから並ではお話にならない。
トンボ写真で有名な田中博さんが時々日記に書いておられるが、花の写真を続けて日記に掲載するとアクセス数が増え、トンボが続くと減少するのだという。
トンボでさえそうなのだから、蚊は論外。
写真の用途が学術的なものであればまだしも、それで商業出版を目指すのは、そもそも大変に無理筋であり、ここは100点、いや300点くらいを目指したいのである。
そうすると当然時間がかかる。蚊が行動を起こすのを待っている時間だけでも、合計すればかなりの時間になる。
待つは待つでも、野鳥なんかを待つのなら、人がその結果撮影できた写真を見て、
「うぉ〜」
と感嘆の声を上げてくださる可能性が高いのでそれなりに頑張れるものだが、蚊の場合、そんなことは考えにくく、非常に孤独な自分との戦いになる。
蚊を2〜3日待つのは、野鳥を2〜3ヶ月待つくらいの感じがする。
深夜は、小さなワンセグテレビの画面を眺めて待ち時間を過ごすのだが、テレビショッピングを放送しているチャンネルが多い。
深夜に、こんな番組を見る人がいるのだろうか?と僕なんかははなはだ疑問に感じるが、各局がそうしているところをみると、需要があるのだろう。
一方8月になると、毎年戦争に関するテレビ番組が放送されるが、自分が知らないことがあまりに多いと思う。
NHKなどはチャンネルを今より2つくらい増やし、そのうち1つは、同じコンテンツの使いまわしでいいので24時間延々と戦争に関する番組を、あと1つは失踪者や指名手配犯に関して情報を求める番組を、これまた使いまわしでいいので流してくれたらいいのに、と思う。
(お知らせ)
写真展の案内・・・野村芳宏・西本晋也・武田晋一による3人展
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2011.8.12〜14(金〜日) 更新のお知らせ
今月の水辺を更新しました。
(お知らせ)
写真展の案内・・・野村芳宏・西本晋也・武田晋一による3人展
● 場所 北九州市小倉南区平尾台 平尾台自然観察センター
● 期間 7月2日(土)〜8月31日(水) 9:00〜17:00
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2011.8.10〜11(水〜木) 観察会
どんなに一生懸命写真を撮っても、その写真が使われなければ意味がない。
ところが、市場で必要とされている写真には偏りがあり、売れる写真が決まりきっていて、定番の写真ばかりに需要が集中する傾向がある。
基本的に、美化された自然の写真がよく売れる。
自然にはいろいろな側面があるのに・・・といつも思うが、どんな写真を使うかは使う側の人が決めること。個人の力ではどうにもならない面がある。
いっそうのことそれを逆手に取ろう、と僕は売れやすい写真を徹底して撮影することで、自然写真を仕事として成り立たせてきた。
一方で、もっといろいろな自然の側面を知ってもらうためにはどうしたらいいのかを考え続けてきた。
随分前のことだけど、昆虫写真家の海野和男先生にそれを聞いてみたことがある。
先生の答えは、
「自分で企画をして本を作るんだよ。そしたら、自分が使いたい写真が使える」
というものだった。
それ以降、写真の発表の場はさまざまあるけれど、僕は、ひたすらに本を作ることばかりを考えるようになった。
そして本を作ってみると今度は、どんなに本を出したって、それで何かが変わらなければ意味がないと感じるようになった。
さて、福岡県の遠賀中間地区と呼ばれている区域の先生方と、フィールドを歩いた。
人の自然観は幼いころから徐々に養われるものであり、大人に何かを言っても、そこには限界がある。だから何かを変えていくためには、いっけん遠回りのようだが、子供たちに話を聞いてもらうのが最短。
そのためには、小学校、中学校の現場について、いろいろな角度から熟知しておく必要がある。
この夏、僕が先生方の集りに参加するのは、今回で7度目だ。撮影が二の次になっている感があるが、もう開き直って、今年はそんな年にしようじゃないか!
(お知らせ)
写真展の案内・・・野村芳宏・西本晋也・武田晋一による3人展
● 場所 北九州市小倉南区平尾台 平尾台自然観察センター
● 期間 7月2日(土)〜8月31日(水) 9:00〜17:00
● 休み 毎週月曜日(ただし夏休み期間中は無休)
● 入場 無料
● 展示数 1人10点 合計30点 B4
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2011.8.8〜9(月〜火) 講演を引き受ける訳-1
本の定価は、その本がどの程度売れそうなの影響を受けて決まるのだという。あまり売れそうもないのなら高く、売れる見込みがあるのなら安くできる。
安くできれば求めやすくなるから、より売れやすくなる、といういい流れになってくる。
それはともあれ、ある編集者が制作中の本の価格をいくらにしようか?と悩んでいたところ、世界的な写真家である著者が、
「僕が作る本で、増刷されないものなんてないよ。」
とおっしゃったのだそうだ。
要は、売れるので安くしても大丈夫、という意味だが、価格のことのみならず、著者の名が知れていて、名前で本を売る力を持っていればいるほど、自由な本作りができることになる。
逆に、名前が知られてなければ、手堅い本作りが要求される。
名前で本を売るなんて、嫌だなと思うこともある。内容で売りたいじゃないか!と。
がしかし、そんな甘いものではないのも、紛れもない事実。
僕は人前に出るのが大嫌いであり、有名になりたいとは思わないし、むしろその逆なのだけど、一方で、自分が伝えたい自然をちゃんと伝えるためには、名前を売り、本が売れる状況を作っておく必要があり、いつもそのジレンマに陥り、ああでもない、こうでもないとウジウジしてしまう。
人の前に出て行くべきか、徹底して職人として生きていくべきか。
以前はそれを自分で決めることだと思っていたし、一旦は「よし、僕は職人として生きて行こう」と決意したつもりだったのだが、最近は、どうもそれは世間が決めることのようだと考えを改めるようになってきた。
昨日僕は、数百人単位の方の前に立ち、話を聞いてもらった。
しかも、その場はフォーマルな場であって、仮にその檀上に誰かが立ちたいと望んでも、そうは思い通りにならない場。
しかし、そこに僕を立たせることができる立場におられる方と出会ったわけだから、これは運命としか言いようがない。
流れ、としか言いようがな何かが、世の中には紛れもなく存在する。
(お知らせ)
写真展の案内・・・野村芳宏・西本晋也・武田晋一による3人展
● 場所 北九州市小倉南区平尾台 平尾台自然観察センター
● 期間 7月2日(土)〜8月31日(水) 9:00〜17:00
● 休み 毎週月曜日(ただし夏休み期間中は無休)
● 入場 無料
● 展示数 1人10点 合計30点 B4
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2011.8.6〜7(土〜日) 準備完了
明日は講演の日。
講演の類は、いつも準備に取りかかった段階で、
「あ〜断れば良かったな。」
としみじみ思う。
特に今回は、聴衆の数が500〜1000人と大変に多いのと、集会のテーマが人権という重く、僕にとっては非常にむづかしいものなので、ますますそう思った。
だが、準備が終わると、
「やっぱり、引き受けて良かった。」
と感じる。
話をするために自分の意見を整理してみると、その結果、はじめて分かることがたくさんあるのだが、今回もまさにそうだ。テーマが何であるにせよ、一度自分の意見をちゃんと整理しておくことは大切なことだ、と改めて思う。
またその際には聞き手が不可欠であり、誰かが聞いてくれなければ、本当の意味で自分の意見をまとめることなんて、できないことではなかろうか。
僕は普段から、この日記の中に自分の意見を書くし、その際に軽い気持ちで書いているつもりは全くないが、記事を書こうが書くまいが自由なWEBの場とは違って講演は約束された場で開催されるのであり、やはり重みが違うし、そのプレッシャーを受けなければ、引き出すことができない自分がある。
(お知らせ)
写真展の案内・・・野村芳宏・西本晋也・武田晋一による3人展
● 場所 北九州市小倉南区平尾台 平尾台自然観察センター
● 期間 7月2日(土)〜8月31日(水) 9:00〜17:00
● 休み 毎週月曜日(ただし夏休み期間中は無休)
● 入場 無料
● 展示数 1人10点 合計30点 B4
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2011.8.5(金) 蚊の飼育
ここのところ用事が重なり、とにかく慌ただしい。中でも最大の山場は8月8日の講演。
少なくとも500人。多ければ1000人近い人の前で話をする。
時間も90分〜120分程度と長い。
「福岡県人権・同和教育夏期講座」の中の講座の1つを担当し、僕の目にうつる自然と人間について話をする。以前なら、そんな場で自然写真家が話をするというのは、考えられないことだったらしいが、このところは、人権・同和教育の幅を広げようとしておられるのだそうだ。
以前、あるテレビ番組で僕の仕事を紹介してもらったところ、小学校の時の担任の先生が涙を流しながら、母に電話をかけてきてくださったそうだ。
「あの武田君が、社会の中で活躍している。」
と。
僕がいい意味で取り上げられただけで先生が涙を流すほど、僕は問題児だった。
そんな無法者出身の僕が、今度は、人権集会のような場に出て行くことになった。
ともあれ、ここ数日はそれらの準備で、ふと気付けばすでに夕刻。全くスケジュール通りに事が運ばない。
しかし、生き物たちは待ってはくれない。
撮影のために飼育中の蚊は、次々と羽化を始めているのに、成虫を飼育するための準備はまだ整っておらず、講演の準備の合間に慌てて帳尻を合わせる。

本来なら、蚊専用の飼育ケージを自作したいのだが、その時間がないので、植物を育てるセット(800円弱)を流用することにした。
蚊は、交尾をする際にある程度の空間を要するので、そこそこの大きさの容器が必要になる。
志賀昆蟲普及社で売られているハエ用のケージを購入しようかとも思ったが、万単位のお金がかかるので却下。

蚊を取り扱うための小道具も、慌てて作った。
左から、小さな虫を移動させる際に使う吸虫管。蚊くらいの大きさの生き物になると、網では取り扱いにくいので、この管で吸い取る。
蚊を飲み込んでしまわないように、管の途中には、メッシュが埋め込んである。

机の上には上の画像のアクリル板を置いておき、板の手前にある穴の部分を屋根のひさしのように机から張り出させ、穴の下に吸虫管をあてがう。

穴の上に蚊を受け止める容器(画面中央)をセットして、吸虫管をふっと吹くと、その容器の中に蚊が入るという仕組みだ。
アクリル板から吸虫管を外した瞬間に、蚊が穴から逃げてしまわないように、吸虫管を穴から取り外すと同時にアクリル板をすっとすべらせ、ひさしのように張り出していた穴の部分を完全に机の上に乗せる。
蚊は容器の中から出られなくなる。
右上のコップの中の固めた石膏に麻酔薬を垂らし、蚊を閉じ込めた容器の上にかぶせると、蚊をしばらく眠らせ、その間に細かな観察や蚊の体のパーツの撮影をすることができる。
蚊は数分で、まるで何もなかったかのように目覚める。
(お知らせ)
写真展の案内・・・野村芳宏・西本晋也・武田晋一による3人展
● 場所 北九州市小倉南区平尾台 平尾台自然観察センター
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2011.8.3〜4(水〜木) どこへ行くのか?
僕はいったいどこへ向かっているのだろう?
自然写真を仕事に選んだ一番大きな理由は、自然が好きだから。
しかし、自然にかかわる仕事は他にもたくさんあるわけで、写真を選んだ理由はそれだけではないはず。
僕の場合、人前に出たり目立つことが大嫌い。その点自然の撮影の仕事なら、そんな機会はあまりなかろうという理由があった。
ところがそんな僕が、人前に出て話をする。
昨日は約300人の人の前に立った。
300人の方々は、直方市の小学校と中学校の先生方。
準備のために、自然の中を歩く時間を随分削った。
なぜ、そうして苦手なことを引き受けるのか?
理由は幾つかあるが、まず第一に、何事もやってみてから物を言おうということ。
いろいろな立場に実際に自分が立ってみることで、初めて分かることがあるはず。そしてその結果、苦手な苦手で、嫌いなら嫌いで、なぜ自分が嫌いであったり、苦手なのかを自分でちゃんと理解することが肝心だと僕は考える。
僕は人と話をした後で、いつも落ち込む。
もうちょっと気の利いたことが言えないものかと。
つまり後味が悪く、それが人前に出ることが苦手な理由の1つだ。
しかし逆に言うと、もしも気の利いたことが言えるのなら、話をした後に、あ〜気持ち良かった!と思えるような話ができれば、人の前に出ることが心地よくなる可能性があるだろう。
そして話術は、訓練である程度は磨くことができるに違いない。
人の好みには自分自身でもどうにもならない部分があるが、好みのすべてが不可抗力なわけではなく、部分的には訓練で克服できる箇所もあるから、まずそこをやってみてから物を言いたいのである。
(お知らせ)
写真展の案内・・・野村芳宏・西本晋也・武田晋一による3人展
● 場所 北九州市小倉南区平尾台 平尾台自然観察センター
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2011.8.1〜2(月〜火) 準備
明日は、午前中に講演、午後からは博物館で特撮。慌ただしい一日になりそうだ。
僕は目立つことが大嫌いなので、講演等、人前で話をするのは好きではないが、話の準備に取り組み、何を話すかが決まってくると、それなりにやりがいも感じるようになる。
だから、引き受けるからには、自分がそれを好きとか嫌いとか、得意とか不得意といった次元とは別の次元で取り組む。
残念ながら、もっと前に終わるはずだった撮影に大変に手間取り、時間をロスしてしまい、話をすることに関しては準備万端という訳ではないが、とにかく腹をくくって話をしようと思う。
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● 休み 毎週月曜日(ただし夏休み期間中は無休)
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