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僕が特に強く影響を受けた本、お気に入りの本を紹介します。

 中味を見ずに本を注文して買ったものの、届いてみたらがっかりという経験をお持ちの方はおられませんか?僕は自分が本作りに携わった結果、本は、必ずしも最善を目指して作られているとは限らないことがわかりました。
 例えば、いついつまでに本を出すという期限が先に切られていて、時間的なゆとりがない場合、手持ちの写真の中にあまりいいものではなくてもそれを使わざるを得ないことがあります。
 また、自然に関係する本は必ずしもいい物がよく売れるわけではなく、本の内容よりも出版社の営業力が物を言うこともあります。すると、どこまでもいい本を作ることにこだわっても意味がないという心理が働くことがあります。
 他にも、色々と思い当たるふしが幾つかあるのですが、それは置いておき、ここでは、僕が絶対にお勧めできる本をジャンル別に紹介してみたいと思います。

 
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児童書のお勧め

      
おちばの したを のぞいてみたら・・・
皆越ようせい

地面付近にすむ小さな生き物たちにカメラを向けた本です。嫌われがちな訳の分らない生き物達が実にユニーク。僕は皆越ようせいさんの名前は知っていましたが、この本をはじめて手にした時、「あ〜こんなすばらしい写真家がいるんだ!」と心を打たれました。きれいな被写体にカメラを向ければ、人を感動させる写真が撮れるのはある意味当たり前。でも嫌われ者にカメラを向けると、その人の力量が問われます。写真は勝ち負けではありませんが、皆越さんは、僕が絶対に勝てる気がしない写真家の一人です。

 


写真集のお勧め

      
The Creation エルンスト・ハース
2011年9月10日の撮影日記より転載



 プロを志す人がこれを見たことがないのなら恥ずかしい、と言えるような名作が、自然写真の世界にも存在する。 エルンスト・ハースの The Creation。
 1977年の作品であり、1968年生まれの僕にとっては古い本ではあるけど、1993年に新装版の第2刷が発売されていることを思うと、見ておなかければならない作品に含まれるだろう。
 好みかどうかという見方をするなら、正直に言えば、エルンスト・ハースの作風は好みではない。聖書の影響を受けたこの作品が、僕には馴染み難い感じがして、自分が日本人であることを改めて思う。
 僕には、あまりよく分からない世界だと言える。
 やはり世界的な自然写真家である ジム・ブランデンバーグの写真にも、僕はそれに似た馴染み難さを感じる(ジム・ブランデンバーグが実際にどんな宗教の影響を受けているのかは、まったく知らないのだが)。
 絵柄はとても綺麗だと思うが、入り込むことができない。
 それでも The Creation は、年々、ジワリジワリとその値打ちを感じるようになってきた。簡単に分からないからこそ、面白いのかもしれない。

 あとがきに、「技術のことを学びたいのなら、もっと適切な本がある」、としながらも、「写真家は最低限の器材で仕事をするべきであり、器材が少なければ、被写体や構図について考える時間が増える」、と言ったことが書かれている。
 もしも、今エルンスト・ハースが生きていたら、どんなレンズを用い、どんな写真を撮るのだろう?
 僕の感でしかないけれども、おそらく早い段階でデジタルカメラを導入し、案外、短焦点レンズではなくて、高倍率のズームレンズを使用するような気がする。
 僕が持っているものは、1993年に刷られた新装版の第2刷で、定価が4500円。それが現在は、プレミア付きのものしか売られていないということは、絶版になったのだろう。



 こちらは、多分同じ内容のものだと思うが、洋書で、ソフトカバーのものではなかろうか?



      
瞬間をとらえる
スティーブン・ドルトン

主に、室内に特殊な撮影セットを組み立て、機械の力で生き物の瞬間を写し取るスティーブン・ドルトンの手法は、自然写真家の間では瞬間写真などと呼ばれていますが、好き嫌いが分かれるところです。ただ、もしも昆虫やカエルやアメリカザリガニ程度の小さな生き物の写真家を志す人が、この瞬間をとらえるを見たことがなかったとしたら、それは明らかな勉強不足であり、恥ずかしいことかもしれません。僕は、正直に言うと、瞬間写真があまり好きではありませんが、そんな僕でさえも、とにかく試してみようと、そんな気持ちにさせられた一冊です。その際に勉強したことが、今になって役に立ってケースが少なくないのです。


      
アザラシのカンニングペーパー
中村浩治

僕の日記を読んで面白いと感じる人は、おそらくほぼ100%、この本の熱烈なファンになるでしょう。アザラシのカンニングペーパーは主に海の中の生き物たちの写真と、撮影のエピソード綴った文章とで構成されていて、写真集であり、読み物でもある本です。海の著名な写真家には中村姓が多いのですが、浩治さんはどちらかというと自然写真ファンにはあまり名を知られていない存在のように感じます。大変に素晴らしい写真家です。

 

      
night rainbow 祝福の虹
高砂淳二

僕は、自然写真家の中では研究者肌の写真家を尊敬する傾向にありますが、高砂淳二さんは例外です。主に夜景を集めたこの写真集は、とても気持がいい!夜景にほとんど興味を持ったことがなかった僕が、夜景をどうしても撮影してみたくなり、特殊で高価なレンズを購入しました。興味を持たなかった人までもを引き込んでしまう。それがプロなんだ!と、教えられた一冊です。
自然や自然写真を、分析せずに見たい人にお勧めします。


 

      
山原の自然―亜熱帯の森
湊和雄

「生き物の写真家が撮影する風景写真など、見られたものではない!」と、僕はあるところで、ある出版関係者から言われたことがありますが、確かに大抵の場合、その通り!それを根底から覆してくれたのが山原の自然という写真集で、僕が今、風景から水中までジャンルに拘ることなくカメラを向けるのは湊和雄さんの影響が大だと言ってもいいでしょう。何にカメラを受けても極めて丁寧、心が篭った写真ばかりが集められた一冊です。
色々な被写体にカメラを向けたい人に、是非お勧めの一冊です。

 

      
森案内
細川剛

日本の自然にカメラを向けた写真集の中では、僕としてはこの森案内が最高傑作です。この本を初めて手にとった時には、そのあまりの内容の良さに手が震えるような思いがしました。絵葉書的な写真にはもう満足できないという写真好き、森のにおいが感じられる写真を見たいという自然好きに絶対にお勧めの一冊です。

 
 

      
蝶の飛ぶ風景(Butterflies)
海野和男

生物学の学生だった頃、僕は海野先生の写真を見て、自分もプロの写真家になりたいと考えるようになりました。幅広くいろいろな昆虫にカメラを向ける海野先生ですが、僕は中でも蝶の写真が好きで、当時、次々と発表される熱帯の色鮮やかな蝶の写真に何度となく胸をときめかせ、とうとう抑えきれなくなったのです。この写真集は、いわゆる花鳥風月を好む人にはあまりお勧めできませんが、本物の虫好き、虫を美化するのではなく、虫のエグイ所までもが好き!という人には、是非見てもらいたい一冊です。

 
 


教本・ガイドブック・図鑑のお勧め

      
飼育と観察

「飼育と観察」は僕が子供の頃愛読した生き物の飼育や観察に関する本で、昆虫からウサギや犬あたりまで幅広く網羅されています。ただし、本の内容は比較的最近新しくなっていて、僕が幼少時に手に取っていたものとは全くの別物です。新しくなった本は、さらに分りやすくて、内容のあるいい本だと思います。生き物好きの小さな子供がいる家庭に一冊置いておくと、きっと役に立つことでしょう。

 

      
Nature Photographer's Complete Guide to Professional Field Techniques

JOHN SHAW

風景から野鳥からマクロまで、幅広いジャンルについて取り上げた写真の教科書ですが、何が基本かに徹底してこだわった本なので、写真を本当に上手くなりたい人にはお勧めです。基本にこだわる一方で、特殊だけれどもあれば非常に便利な機材、しかも日本では見たこともないような発想のものが幾つか紹介されています。ただし、すべて英語で書かれています。
 



読み物のお勧め

      
ミニヤコンカ奇跡の生還
松田宏也

毎日のように日記を更新し、しかも本を作る作業をしている僕ですが、実は、ほとんど読書をしたことがありません。文字を目で追うことが苦手なのです。その僕が、しかも高校時代に一気に読めてしまった本がこの本。僕が読んだのは83年に発売されたものですが、今は、新しくなったものが売られているようです。多少なりとも文字を書く仕事をする人間には、「言葉にならない」という表現は許されないとどこかで聞いたことがあります。それを言葉にするのが仕事だろうと。でも、この本に関しては、言葉にならない以外に、僕は言葉が見当たりません。とにかく読んでとしか言いようがないのですが、高山で遭難をして、あとちょっとで命を落とすというギリギリの状況から生還した著者のノンフィクションです。
 

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自然写真家・武田晋一のHP「水の贈り物」 僕のお勧め・僕の本



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