武田晋一による一刀両断
 
  もう10年くらい前のことになるが、沖縄在住の自然写真家・湊和雄さんの写真事務所に遊びに行ったときに、湊さんから、
「昆虫写真家の中で、一番上手いのは、新開さんだと思うよ」
 と、うかがったことがある。
 同じような話を、昆虫を撮影する複数の写真家から聞いたことがあり、プロの写真家が憧れるプロが、新開さんなのだ。
 僕も、なるほどな!と共感し、その撮り方を真似ようと、何度も試みた。
 写真は絵と違い、同じ被写体が目の前にあり、同じ道具を持てば、しばしばどちらが本家か分からないくらい見事に真似をすることができるが、新開さんの写真の中には、どうしも真似ることができない写真が多かった。
 特に、小さな昆虫の部分にクローズアップして、それを洒落たデザインの絵にしてしまうセンスは、他の追随を許さないと言ってもいい過ぎではないだろう。
 また、単に写真が絵として見応えがあるだけでなく、同時に、その生き物について見事に説明できている点がすごい。
 プロの自然写真家ってどんな人のこと?と、現役の自然写真家にたずねたら、人それぞれの答えが返ってくるだろうが、僕は、被写体をちゃんと説明でき、同時に、その被写体を絵にできる人、つまり、生物学であり、美術であるような写真を撮れる人がプロだと考える。
 そこに自然写真の世界での、アマチュアとプロの一番大きな違いがあるように感じるからだが、それって、具体的にどの写真?と、聞かれたなら、僕が真っ先に思い浮かべるのが、新開さんの写真の数々だ。

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